3710920269

「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

米朝初の首脳会談、ウランバートルではなくシンガポールで開催

f:id:minato920:20180511060201j:plain

 

 トランプ米大統領金正恩アメリカ朝鮮労働党委員長との会談は、結局シンガポールで開催することが公表されました。一時有望視されていたウランバートルでの開催は実現しなかったことになります。

 

 思えば先月末の時点では、米朝首脳会談はウランバートルでの開催が現実味を帯びていました。金正恩委員長が空路での移動を好まないことを前提に、陸路で移動可能な中立地での開催が必要と考えられていたためです。

 ところが、当方はというと、どうにも引っかかるものが消えませんでした。いや、ウランバートルでの開催が有力と語られれば語られるほど、逆にポシャるんじゃないかと言う不安が大きくなったのです。これが後付けでないという証拠に、4月29日時点でのFacebookでの投稿とツイートを出しておきます。

 

www.facebook.com

 

 上手くいくと思った時に落とし穴があり、可能性が高くなったと思った時から可能性は低まっていく。

 ある種非科学的なことを言うのもどうかとは思うのですが、20年以上モンゴルを学んできた者の悲しい「カン」が、ウランバートルでの開催を有力視する報道が出れば出るほど、なればこそ開催が実現しないに違いないという見方を増幅させていったのでした。

 で、案の定である、と。

 もっとも、現実には開催地がシンガポールに決まった、そしてウランバートルにならなかった要因は様々です。一説には設備・警備上の理由と言われていますし、有力な要因だったのだろうという推測は可能です。

 

mainichi.jp

 

 他方、モンゴル側に他の原因はなかったのか?これを検討するには時間と手間を掛ける必要がありますし、簡単なことは言えません。

 ただし、特にモンゴル側の動きで検証すべきポイントとして、「バトトルガ大統領とフレルスフ首相がどれだけ乗り気だったのか?」「大統領官房と内閣との連携は取れていたのか?」という2点は挙げておくべきと考えます。

 つまり、第1点として行政府トップの歓迎の意思が確認できなかったこと、第2点としてモンゴルの行政府が二大政党のねじれ状態になっていて、民主党系の大統領官房と人民党単独内閣との間で外交交渉の窓口一本化ができていなかったことが、それぞれウランバートルでの会談開催に二の足を踏ませたという仮説が成り立つわけです。これらの仮説が、とりわけ検証作業で中心を占めるべきであろう、と現時点では考えられます。

 また、モンゴルにとっての「損得勘定」も論点となります。米朝首脳会談開催が鳴らなかったのはマイナスかも知れませんが、他方一時的かも知れませんが、モンゴルの名前を売ることには成功したとも言えるのです。これには、地域安全保障問題の仲介者として、今後もモンゴルが存在感を示すことができるかどうかも関係してきます。

 とはいえ、北東アジア情勢は複雑怪奇です。トランプ米大統領のツイートが出た以上、これを引っくり返す、つまりは氏のメンツを潰す事態はホワイトハウスが許さないでしょう。それでも、この先何があってもおかしくはありません。