四万十川沿いに河口の方へと山奥を分け入る予土線。知る人ぞ知る無人の棒線駅、半家駅があるのは、その途中です。
夏が去って久しいにもかかわらず、相変わらず生い茂る草木を分けるように、宇和島行の列車が去っていきます。
濃い緑と土色の世界の中、白と水色の車体が彩光を放ちます。
列車が去った後に残ったのは、熱帯の地の鉄道かと思うような草深き世界。鉄路とその傍らのトイレがなければ、およそ人の営みを見出すのは至難の業です。
ホームにはありがちな細長い待合室と長いベンチ。「しまんとグリーンライン」という愛称(?)にちなんでか、緑色に塗りあげられています。
壁にあるのは、まばらな時刻表と須崎までしかない運賃表、いくつかのポスター、そして地元の案内図です。
その案内図のイラストは、それ絶対狙ってるよね、という登場人物ばかり。「これであなたもハゲマニア!!」という吹き出しには何とか耐えましたが、口半家、奥半家には反則に近いものを感じました。
駅があるのは高台の上。集落があるのは、屋根のない細い階段を降りた先です。
階段の下まで降りてくると、国道に突き当たります。駅前に広いスペースも車の通れる道もないせいか、駐車場と駐輪場が道路沿いに設けられています。
その傍らには小さな倉庫がありました。集落が集落なので、婦人消防隊もこの名前です。
西に向かう国道。このあと江川崎で国道441号線と合流し、しばらく同じ道を共有します。
予土線が走るのは道路の上。跨線橋と僅かに見える構造物が、辛うじて鉄路の存在を知らせています。
経年を感じさせる駅の案内板。あるいは40年余り前、駅ができたときからのものかも知れません。
道路上からは、待合所のブロック塀に小さな駅名板が見えます。木々のせいで駅にあるような構造物は他には見いだせず、案内板がなければ、待合所も物置か小屋ぐらいにしか見えません。
再び階段を上がり、上り列車を待ちます。ひらがな書きの衝撃、漢字のそんな書き方があったのか感、ローマ字の英語・ドイツ語感、表記から来るイメージの違いがこれだけ極端な駅もない気がするのは私だけでしょうか。
待合所の壁には、そんな駅名板のキーホルダーの広告がありました。ただ買うことができるのは、隣の江川崎駅。肝心のこの駅では売っていません。
そう言えば、こちらとは対極で、入場券がお守りとして人気の増毛駅という駅がありました。返す返すも、配線となったのが惜しまれます。
そんな名前の駅に、窪川行の海洋堂ホビートレイン、かっぱうようよ号がやってきました。
半家駅に来るかっぱうようよ号。ふと、アルシンドという名前を思い出しました。
(参考)