列車は留萌を出発すると、ほどなく車窓から海が眺められるようになりました。ここから終点の増毛まで、日本海沿岸をゆっくりと動いていきます。
留萌を出て黄金岬を右手に見ながら進路を南西に変え、ここからずっと日本海を右手に眺めます。少し走ったところで最初の瀬越駅に到着。この辺りが留萌市街地の西端ぐらいですが、駅を越えた辺りから絶景が広がります。
日本海オロロンラインの愛称を持つ国道231号線をくぐると、列車はさらに海沿いを走っていきます。
次の礼受駅では、ダルマ駅舎が出迎えてくれました。外壁には吹きすさぶ風雪に耐えてきた跡が残っています。一度でいいから、冬にこの路線に乗りに来てみたかった。
次の阿分駅のホームは木の板を並べたもので、長さは車両1両分もありません。乗務員用と乗客用のドアそれぞれ1つずつ、車両の端にあるものさえ使えれば良いという簡素の極みです。
ときに「朝礼台」と呼ばれるこのようなホームは、北海道の鉄道が延びるに従って道内各地に現れました。中には長らく正式な駅として扱われないものすらありましたが、ローカル線の廃止、路線は残っても駅の廃止などで、次々と姿を消していきます。そして、この区間の朝礼台も、その運命はすでに決まっています。
次の信砂駅は、十分な長さのホームに新し目のプレハブの待合室がありました。
礼受駅に続いてダルマ駅舎の舎熊駅。こちらは最近ペンキを塗り直したのか、外観はきれいに仕上がっています。駅舎の向こう、家並を越えて日本海が広がります。
再び板張りの朝礼台が見えてきました。朱文別駅です。静かに近づいてくる冬を前に、生い茂る夏草が最期の勢いを見せています。
ところどころ湾曲する日本海岸に沿って、線路は続きます。海の向こうには今しがた通り過ぎてきた朱文別、さらに向こうは留萌の市街地でしょうか。
列車が速度を緩めると、小さな小さな待合室が目に入ってきました。傍らで自転車が主の帰りを待っています。
その待合室から少し離れたところにある箸別駅。真冬は待合室とホームの間を歩くだけでも難渋することでしょう。それなのに間が空いているのは、かつてはその間までホームが伸びていたのか、あるいは違うのか。
再び右にカーブする列車の向こうに、漁港が見えてきました。
しばらくすると、久しぶりにアスファルトの広い敷地が目の前に広がりました。その奥には漁港、その手前で漁船が何隻も引き上げられています。
出航を待つ漁船の数々。冬は荒涼としきっているであろう風景の中を走り抜け、ようやく街並みの中に入ってきました。
速度を緩め切った列車が歩みを止めたところが、終点増毛駅。ローカル線のどん詰まり、ついにたどり着きました。