「土佐のおきゃく2016」の2日目。この日は大橋通商店街で開かれた第48回南国土佐皿鉢祭に来てみました。ここでは土佐料理の華たる皿鉢料理をはじめ、高知の料理界の粋が結集した料理が披露されます。
まず、皿鉢料理って何?という方、こちらの解説をご覧ください。
まずは昔の刺身や皿鉢料理。流通も発達していなければ、欧米からの食材もほとんど入ってきていないので、今のものと比べれば質素に見えますが、それでも当時はかなりのご馳走だったことでしょう。
では、現在の皿鉢料理にはどんなものがあるかというと、
いきなり凄いのが出ました。言っときますが、こういうイベントでもなければそうそうお目に掛かれないレベルです。
こちらは「市場寿し」ということで海のものに特化していますが、一般的には魚や寿司だけではなく、野菜など陸のもの、山のもの、はては果物に羊羹まで、とにかくバラエティに富んだものを大皿に集めて盛り付けます。それも、オサレな懐石料理やフランス料理のように、大きな皿にちょこっと乗せるだけではありません。ご覧の通り、文字通り「盛り」付けるのです。種類も量も豊富なのです。
ちなみに、隣に何か見えますが、
♪よっちょれよ♪♪よっちょれよ♪♪ってこれ皿鉢じゃないよ♪
というわけでちょっと逸れましたが、ガシラのよさこい。土佐の料理人は皿鉢料理ばかりか、こういうのまで作ってしまうのです。
話を戻して、こちらは皿鉢と言って間違いありません。カツオの活造り風というのは多分初めて見ますが。
今回の皿鉢祭には、県内の料亭・レストラン・旅館・ホテルなどなどが出品していて、パンフレットや料理の案内を置いています。
隣の作品(料理と言うよりしっくりくる)は、活造りで海を表現しているようです。寒桜(?)の枝は、サンゴを表しているのでしょうか。
右側のような船盛も、祝宴で見たことがあります。ここまで凄いのじゃないですが。そして左側、ここまで立体的なものも皿鉢の範疇に入るのでしょうか。
こちらは寿司三昧。皿鉢料理と言っていいかどうかは分かりませんが、この集密感は共通するものがあります。
こちらはむしろ他県でも見られるような祝事風の料理。
というのでふと気を緩めてしまったのですが、それがいけなかった。次に行ってみたところ、
うわぉ。
事ここに至っては気の利いた表現など出ないほど圧倒されてしまうのですが、ここまで駆り立てるものがある、というのも、よく分かりませんが驚きです。
ここからは皿鉢もありつつ、他の料理もいろいろ並んでいます。この辺は結婚披露宴の宣伝もかねての出品のようです。
もはや皿とか鉢とかを超越した料理。こちらも結婚披露宴用でしょう。右側に組みひもで"Love"と書かれているのも見逃せません。結婚式とか披露宴は得てして派手な方向に行っちゃう向きもあるようですが、どうもその派手さの傾向がなんか違うなぁと。
こちらは皿鉢を主体にしたコース料理。これでも大人しく思えてくるから恐ろしいことです。
これだって紛うことなき高級な料理なのですが、これまで見てきたアグレッシブな料理の数々からすれば、まとめた感を何よりも受けてしまいます。
典型的な和の懐石料理と、皿の円周にほぼ収まった皿鉢料理。見ていて落ち着きます、と言えばいいのか何なのか。
ただ、このまま大人しく終わると思ったら甘い。今度は皿鉢料理と生け花のコラボが続々と登場します。
タイやエビに目を取られますが、下の方にはトビウオが並んでいます。飛魚出汁(あごだし)はご存じな方もいらっしゃるでしょうが、トビウオは食べられます。スーパーの鮮魚コーナーでトレイにパック詰めされて売られているのを初めて見た時は驚きましたが。
サンバの衣装を思い出しました。こんな感じの背中。
と思えば、これなど落ち着いた感じがしますね。
中央に鳴子があるのが見つかるでしょうか。随分迫力のあるよさこいです。
こちらはオーソドックスに鯛の刺身を盛っています。十二分にオーソドックスです。
料理もさることながら、この枝の伸びっぷり。春が来たか来ないか、という感じで、わずかに花が咲いています。
これを豪華と言わずして何を言うのか、という勢いの刺身。もはや盛り合わせってレベルを超越しています。
巨大船盛り。大漁旗を靡かせてもおかしくない規模です。
皿鉢と船盛り、土佐の祝宴です。
中央に見えるのはまず間違いなくはりまや橋。もはや魚がポーズをとるぐらいでは驚かなくなってきました。
さて、私が鑑賞した皿鉢料理はだいたいこのぐらいです。
が、ディスプレイ右端をご覧ください。まだ下にかなりスクロールできるのに気づかれましたでしょうか?
そうです。皿鉢祭(皿鉢料理だけとは言ってない)なのです。今回は中国料理、西洋料理、和洋菓子の出品も多数あるのです。
まずは中国料理。盛り付けの美、という点では皿鉢料理と共通しますが、皿鉢の3次元的・動画的な動学(ダイナミズム)に対して、中国料理は2次元的・絵画的な静学(スタティックス)を感じさせます。おっ、なんか上手いこと言えた。
こちらは点心にデザート。奥の器も風情がありますね。
中国料理の刺身。同じ系統の料理でも、というかなればこそ、日本料理との微妙な違いを感じます。そして左手には桃の大群。
巨大キュウリの彫刻。中国と言っても広いですし、どの辺の特徴なのかが気になります。
中国料理のみならず、ベトナム料理の出品もあります。木曜日には「アジアンフードマーケット」というのもあるそうなので、今から楽しみにしています。
鳳凰、龍、申、そして芋けんぴ。中国にも芋けんぴはあるのでしょうか、それとも中国から伝わったのでしょうか。民明書房の文献辺りで調べられそうですが←ちょっと待て
パンダが並んでいればかわいい中国料理に見える風潮
一理ある。
一度でいいから学会後の懇親会でこのぐらいの高級料理を、と思ったのですが、会費が恐ろしいことになりそうなので諦めます。
右側は当然として、中央のプレートも、ひょっとして鳥を表現しているのでしょうか。
こんどはカボチャを彫っています。ただこういう平面彫りのみならず、
左側の鳳凰も、色からしてカボチャでしょうね。
それにしても、同じ刺身を同じように魚の姿で盛り付けた料理で、日中の違いを感じるのは興味深いです。この辺、誰か研究してませんかね。
こちらはスッポン料理でしょうか。スッポンを使った食べ物と言えば錠剤しか見たことがない気がするので、珍しい経験です。
ここからはガラッと変わって、西洋料理の出品。実際にはフランス料理が主なようです。
皿の上にこれでもかこれでもかと盛り込んだ皿鉢料理や中国料理とのギャップ。どっちが良い悪いという問題ではありませんが、このギャップがいや増して鮮烈に映ります。
こちらはこちらで祝い事用のコース料理とのこと。これが昼なら別ですが、そうでなければ、たぶんこの前後に呑みに行くんでしょうね。後だけじゃなくて前も。
個人的には右手奥のパイが気になります。何のパイなんでしょうね。
春の訪れを表した料理の数々。
手前はポップな感じですが、奥は皿鉢っぽく見えるから不思議なものです。
さらにはお菓子の出展。ところどころ、普通の料理もあるようですが、基本はデザートです。
高知家の兄弟5人をタイトルとしたデザート。この辺は解題が欲しい気もします。
そしてマカロンタワー。最近は都会の洋菓子の店でもたまに見かけるようになりました。
豪華な盛り合わせ。フルーツやケーキはもちろんのこと、ここでもマカロンが目立ちます。
しかし、マカロンっていつの間に日本でこんなにメジャーになったのでしょうか?ほんの10年前ぐらいは、まず見なかった気がするのですが……
これまで祝宴用の料理を大量に見てきただけに、左側のケーキを見ても新郎新婦の入刀とか考えてしまいます。
手前のタイトルからそのものズバリのもののみならず、春を感じさせる出展の数々。
うん、やっぱ披露宴の料理としか思えないです。
さらに展示があるので、見に行ってみたところ、
他に負けず劣らず凝った料理だと思ったら、なんとこれ、療養食だそうです。いくらなんでも、毎日こんなのを食べているとは思いませんが……
どんな土地にも凄腕の料理人はいるわけで、贅を尽くした料理、粋を集めた料理と言うのは各地にあるはずですが、こと高知に関しては、何か方向性と迫力が違う。
そんな大量の料理に、ただただ圧倒されるばかりでした。