2016年1月30日を最後に、阪堺電気軌道上町線の住吉から住吉公園間が廃止となり、住吉公園駅も営業を終了します。私も何度となく利用した駅に別れを告げるべく、先日帰省した際に行ってきました。
住吉公園駅は大正初期に開業して以来の歴史ある駅。現在の駅舎ができたのがいつかは知らないのですが、建物も字体も歴史を感じずにはいられません。
住吉公園駅は南海電車本線の住吉大社駅に隣接しています。こちらは現在高架化され、地上部分は商店が立ち並んでおり、阪堺電車の住吉公園駅はそのわきにちょこんと座るようなイメージです。
乗り場を示す表示。ここからは天王寺駅前駅までの電車が走っています。
住吉公園駅に入ると、大阪ならではの串揚げ屋があります。駅ナカが流行になるはるか昔からありそうな店です。ただ、住吉公園駅廃止後、どうなるのかは分かりません。
路面電車の駅なので改札はありません。構内に入って振り返ると、忘れられた街のような雰囲気を感じました。
住吉公園駅の時刻表。信じられないかも知れませんが、これが大阪市内を走る電車の時刻表なのです。
上町線終点の住吉公園駅は、かつて朝から夜まで電車の発着する駅でしたが、2014年のダイヤ改正で、そのほとんどが1つ先の住吉から我孫子道に向かう電車に変更され、現在のような極端に本数の少ないダイヤになってしまいました。
ただ、それで不便になったかとは言い難いところです。住吉から我孫子道の間にある住吉鳥居前は、住吉公園から100メートルと離れていないところにあるため、住吉大社駅からの乗り換えにはほとんど差がありません。むしろ、住吉鳥居前から我孫子道間は電車の本数が増えてかえって便利になったのが実際です。
そのような状況で、住吉・住吉公園間の意義はほとんど失われてしまいました。そして、この区間のポイント部分の補修に多額の費用がかかることが判明、昨年8月に廃止申請が出されるに至りました。これ伴い、現在この区間を走る電車も我孫子道発着に変わります。僅か数本の経路変更、実質的な影響はほぼないと言うべきでしょう。違いがあるとすれば、始発の住吉公園から座れる機会がなくなるぐらいです。
一方で、住吉公園駅と言えば、初詣で関西随一の参拝客が訪れる住吉大社のすぐ近く。これまでも正月三箇日には、多くの臨時列車が住吉公園まで運転されてきたのです。今年も三箇日の臨時ダイヤが貼り出されており、昼間には50本の臨時列車が設定されています。住吉大社のすぐそばで折り返せる駅が無くなることで、三箇日のダイヤをどうするのかという疑問は湧いてきます。
住吉公園の駅名板。HN11の番号が付されています。廃止とともに、これも欠番となります。
先発の電車を示す、行燈式の電光掲示板。かつてこの駅からひっきりなしに電車が出ていたころは、乗り場ごとに前後2両、計4両停まれる電車のうち、どれが先発かを示す必要がありました。
駅の中程に置かれた防火水槽。
中では金魚が泳いでいます。廃止後の行方は分かりません。
駅から住吉、天王寺方面。カーブ途中にポイントが設けられた、少々複雑な構造です。これも廃止を早めた要因なのかも知れません。
2番線の車止め。レールの間、枕木の上に置かれた赤いボードは、電車の停車位置を示します。
1番線。ご覧の通り、電車は車止めぎりぎりで停車するのです。
朝の住吉公園駅、1番線に停まる電車。普段のダイヤなら朝8時過ぎ、終電の1本前の電車です。
発車を待つ電車。ほどなく運転士が乗り込み、簡単な放送と発車ベルのあとに動き出しました。
朝の光の中を天王寺駅前へと去って行った電車。ひとまず今日は、住吉公園に戻ることはありません。
入れ替わりに、別の電車がやってきました。
駅に着いたばかりの電車。通常ダイヤなら、折り返しの最終電車となります。
住吉公園の行先表示。これが見られるのもあと僅かです。
しばらくしてドアが開きました。車内では新年を寿ぐ中吊り広告が掲げられています。住吉公園駅が迎える、最後の正月です。
発車を待つ電車の中。運転士真後ろのLEDの案内が現在地を示します。
しばらくして、この電車も住吉公園駅を後にしました。次の住吉、1月31日に廃止となる区間は、たった200メートルです。
出発した電車は、ほとんど加速する間もないままに住吉駅に着きました。駅には通常営業用のホームが4つあり、この4番線は住吉公園始発の電車専用。なので、このホームもまた1月30日いっぱいでお役御免となります。
しかし電車は信号待ちもほどほどに、あっさりと住吉駅を発車。
短い、本当に短い、最後の旅が終わりました。
【参考】阪堺電気軌道「上町線 住吉~住吉公園間(0.2km)の軌道事業の廃止について」2015年8月