列車は仙石東北ラインを経て、東北本線から仙石線に入りました。列車はすぐに高城町に停車すると、5月末に再開された区間に進んでいきます。
東日本大震災で甚大な被害を受けた仙石線。その後復旧工事が進められてきたのですが、高城町から陸前小野の区間は4年余りの間不通のままでした。この間、途中の陸前大塚・陸前小野間で、津波で被災した路線を内陸部に移設する工事が行われてきたのですが、それがようやく完成したのです。
ここからは趣味性の強い余談ですので、鉄道にあまり関心のない方は読み飛ばしていただいて結構です(っていうかあんま関心ない方がこんなエントリを読むのかという気もしますが)。
既に乗車した区間がその後移設された場合の扱いは、いわゆる「乗り鉄」の間でも意見が分かれるところです。移設後の新しいルートには乗ってないのだから新たに乗り直すべきだという意見もあれば、途中のルートはどうあれ乗ったことがある事実は事実だから乗り直しの必要なしという意見もありますし、中間派もいます。
私自身は中間派です。というのも、ルート変更を全て把握するのは難しいですし、極端な話、路線が高架になったとか橋を付け替えたぐらいでも乗りなおすというのは現実的ではありません。そもそも趣味としての面白さもありません。一方で、ルート変更があまりに大きいと、変更前後の路線を同じと捉えるのに無理がある場合も出てきます。ですので、個人的には、だいたいこんな感じで考えるようにしています。
(1) ルート変更によって路線の営業キロに変更が無い場合、乗車記録は維持。ただし、変更された経路に下で示したような無視できない差異がある場合、従来の乗車記録は参考記録として扱い、新たに乗車し直す。
(a) ルート変更によって途中駅が移設される場合。
(b) ルート変更によって駅の改廃が行われた場合。
(2) ルート変更によって路線の営業キロに変更がある場合で、変更区間のどちらかが起終点かつ変更によって営業キロが短縮される場合は、乗車記録は維持。*1
(3) ルート変更によって路線の営業キロに変更がある場合で、(2)に該当しない場合、従来の乗車記録は参考記録として扱い、新たに乗車し直す。
この仙石線のケースは(3)に該当します。ルート変更によって1.2km営業キロが短縮されたためです(参考:JR東日本仙台支社)。したがって、かつて乗車した区間とはいえもう一度乗っておく必要が出てくるわけです。って、必要と自分で勝手に決めただけですが。
っていろいろ書きましたが、これを奥が深いと捉えるか、めんどくさいと捉えるかは皆さん次第です。私自身はというと、そもそも論として趣味は自分のためのものだから、何をするにしてもマイルールの塊になるのは至極当然と捉えています。もちろんルールなので必要に迫られれば変更もあり得ますが、基本はマイルールで自分を律しながら楽しむのが高度な趣味人ってものだと考えています(お、なんか良いこと言った気がする)。
車窓に目を戻しましょう。列車は復旧した陸前富山駅を通過します。すぐ右手には堤防が迫っています。
海。信じられないほど穏やかな海です。信じられないのだから、4年前のあの日が夢であってもおかしくないとすら思うほどに。
列車は陸前大塚駅に差し掛かりました。ここを通過すると、すぐに内陸部の移設区間に移っていきます。
できて間もない線路。鉄道にしては急な上り坂が、内陸の高台へと伸びています。
移設された東名駅。周囲の整備は、まだまだこれからです。
津波で壊滅的な被害を受け、こちらも内陸へと移された野蒜駅。平日の朝ですが仙台行ではないためか、ホームに人の姿はほとんどありません。
移設区間から海が見えました。この先を、かつて鉄路が通っていたのでしょう。私も通ったことは間違いないのですが、この光景から当時のことを思い起こすことはできません。
真新しい高架路線。このカーブの辺りで移設区間は終わり、以前からの路線と合流します。
鳴瀬川を渡るコンクリート橋。この橋もまた、大震災以後に架け替えられたのでしょうか。
鳴瀬川を渡って、陸前小野駅からは以前より再開していた区間。新しくは見えない線路に、妙な落ち着きを感じます。ここから矢本、陸前赤井、蛇田、陸前山下を経て、列車は石巻へのラストスパートに入ります。
終点石巻駅、仙石線ホームに列車が着きました。列車はしばらく休んで、再び仙台へと引き換えしていきます。
(参考)
*1:(ややこしいですが、要は起点か終点がルート変更で手前に移され、路線が短縮された場合です。変更とはいえ、以前乗った区間が少し無くなるだけなので、記録をチャラにする必要は出てこないと考えてのことです