イギリスの大手タブロイド紙「デイリー・メール」からこんな記事が飛び込んできました。
長い記事で、写真もたくさんつけてくれています。そして中程の写真には「アジアカップ(2027, 2031) 2035、ワールド・カップ(2042, 2046) 2050」と記された文書が額に飾られているのが分かります。カッコの中に入っているのは、この年の開催国にも立候補してはどうか、という勧めのようです。さらに別の写真では、その文書にエルベグドルジ大統領とブラッターFIFA会長の署名が入っているのが示されています。もっとも、記事本文に戻れば当時のモンゴル・サッカー協会の会長が汚職で捕まったという話も載っていたりします。
この文書はエルベグドルジ大統領が2011年1月にFIFA本部を訪問し、ブラッター会長と会談した際に記されたものとされています。となれば、モンゴル側でも何がしかの報道がされているのではないか?なにせ4年以上前なので、検索できるニュースサイトにも限りはありますが、それでも「大統領がFIFA会長と会見した」という見出しの記事が見つかりました。
大統領も会長も同じ単語なのには一瞬驚きましたが、考えてみれば英語ではどちらもpresidentでしたね。
この記事では会見の様子等が述べられていますが、最後の方ではモンゴルでのW杯開催の話になり、最後の一文では「会見の後、大統領と会長は、2027、2031、2035年のアジアカップおよび2042年、2046年、2050年のワールドカップの開催権を獲得するためにモンゴルが争い、権利獲得のために取り組むことを、本会見の際に話したと記録する覚書に署名した」とあります。
モンゴル語の語順のまま訳したので分かりにくい文章になってしまいましたが、要はデイリー・メール記事の写真に示された通りの年に、モンゴルがアジアカップとワールドカップの開催を目指して取り組むことが文書で明記されており、その文書にはモンゴル大統領、FIFA会長の署名が入っているということです。その文書が先の写真で示されたと考えられます。
さらに調べてみると、モンゴル国営放送のウェブサイトで、サッカー協会のA.ガンバータル会長の会見の記事を見つけました。
見出しには「エルベグドルジ大統領とFIFA会長は『2050年にサッカーワールドカップを開催する』という夢の契約を結んだ」と出ています。そしてこの契約にちなんで、青少年サッカー選手支援2050」というNGOを設立したとも述べています。
というわけでこの話、モンゴルのサッカー関係者の間では既に知られた話のようですし、実現の可能性はとにかく、2050年のW杯開催を目標として、取り組みが行われ始めている、とも言えます(それだったらもうちょっとA代表を強化しようよ、とは思いましたが)。
デイリー・メールがモンゴルでのW杯開催という話を報じた、明らかにFIFAブラッター会長を批判するためのものです。批判のポイントは2つで、1つには現会長がFIFAに対してあと35年も影響力を誇示することが可能なのか、可能だとしたらそれはどうなんだ、ということで、もう1つはアジアカップもW杯も本大会に出たこともなければ、FIFAランク200位程度の国にW杯開催など可能なのか、ということです。で、実際その批判は当たっているとも思います。2つ目の点は正直いって癪には障るんですが。
そして、デイリー・メールはある種の暴露話というか、特ダネとしてこの件を扱っているとも思います。おそらくイギリスでモンゴル大統領とFIFA会長の会見(しかも4年前の話です)を知っている人などほとんどいないでしょうし、ある程度はセンセーションが起きる可能性もあります。
ただ、仮にFIFA会長批判という文脈でモンゴルでのW杯開催の話題が大きく扱われ、世の関心を引き起こしたとして、それがモンゴルの人々、とりわけサッカーに携わる人々を不当に傷つけることはあってほしくないなぁ、というのが私の希望です。自国での国際大会、とりわけW杯開催を夢見る権利は、どんな国・地域の人々も持っておかしくないはずですから。